たかが世界の終わり

ある男が十二年も戻ってなかった実家に帰ってそこで過ごす話。なんで十二年も戻ってなかったかというのは冒頭に明かされるしトレーラーでも流されるからそこまで重要なネタバレでもないのかもしれないけど、もしかして全く前情報なしで観たほうがおもしろいのかもしれない。
とにかく、言葉、言葉の暴力よ言葉、字幕でも予告でも日本版ポスターでも「不器用」という語がつかわれるけれど不器用って日本語はなんとなしにださいよね、けれどもまあそうとしか言いようのない言葉の暴力にちょっと疲れる。なんどか目をつむってよーしらんフランス語の響きだけを聞いていた。けれども着実に緊迫していく雰囲気が張りつめて爆発し、収束し、映画は終わる。夕陽が収束を祝い、男は帽子を被る。言いたいことなんかどうせ一つも言えへんのや。たかが、世界の終わりに過ぎないのだし。

私はものすごくぐっときてしまったわけだが、でも感動を求めてみる感じでは全くないぞ、とにかく疲弊する映画だし、Varietyなんかは” a frequently excruciating dramatic experience”と言っていたくらいだし、演出も脚本も過剰だと思うことは多かったししかしその過剰さがリアリティなのであってすなわち根本的には苦しい映画だと思う。でもたぶん日常のなかに苦しさを見出したり取り入れたりすることは想像力のためにも必要なのであって。私は夕陽の中の男の帽子をずっとずっと思い出すだろう。どうでもいいけどギャスパーウリエルが昔に関係をこじらせた男に似すぎでつらかった!