カルチュア

怖いよ!『哀れなる者たち』

『哀れなるものたち』見た。見たあとは結構ムカムカしていたのだがいろいろ話したり読んだりしているうちに怒りも冷め、スルメのような映画だなと思わないでもないので、そのスルメ性について書く。(私はスルメのような映画が必ずしも良い映画とは思わない…

英国映画協会「史上最高の映画100」配信サービスまとめ

気づけば2024年に年が改まっていて、また人類は「新年の抱負」を更新なんかしているが、私は何方かと言えば「新年の抱負」派ではなく「新しい年齢の抱負」派で、なぜならば20XX年になることというよりも自分がXX歳になることのほうがより直感的で、ゆえによ…

Feminism has been solvedな世界で思う人間の描き方

映画バービー見ました。 完璧な世界であるバービーランドで過ごしていたはずのバービーがある日突然扁平足になる。リアルワールドに干渉元を探しにいくのだが、バービーランドとリアルワールドの交差を恐れた男性CxOたちはバービーを捕まえようとする。から…

だいたいの怒りは自分のせい

大衆への怒りというかストレスが凄まじい。InstagramはブスばかりだしTwitterはフェイクツイートばかりである。脳の癖だけで開いてしまって自己嫌悪に陥る。この前書いた記事もそういった大衆による括弧付きの「クリエイティビティ」に辟易していたのである…

MOMATの「重要文化財の秘密」展に行った記録

混雑というのはなぜ生まれるのだろうか。東京は名所はもとより喫茶店もレストランも買い物施設も、いたるところが観光地化している。美術館もまたそのようで。「観光地化」の対義語を作るとするならば「生活化」だと私は考えていて、とどのつまり、そうした…

感傷的に五月を終える

こうして自分の感情と文章に向き合うのも久しぶりだ。気づけば三月からブログを書くことをしていない。しかし三月以降いろいろなことは起きている。仕事のどうしようもなさ、人間関係(恋愛・異性関係)のどうしようもなさ。こういうことを考えるのは誇張抜…

物語を読むことと人の心を読むこと

生理前のジュンク堂書店はすごく気が滅入る。自分が読んでこなかった本、知らない本、知ったって読もうとしない本、そういうものがすべて襲いかかってくる。それらの本を読んでこなかったのは、知らないのは、読もうとしないのは、ひとえに私と私の怠惰が悪…

十一月 - 文体の問題

秋口頃からこのブログをきちんと書こうと、やわらかく決意はしていたものの11月は完全に筆が止まった(タイピングが止まった)。書名は出さないが、新聞の書評欄に載っていたエッセイ本を買って読んだ。小説に出てくる土地を訪れながらそこでその小説を読ん…

十月 - あなたは争いが好き

川の流れは絶えずして、今月もNetflixを漂う。「アイリッシュマン」を観る。去年くらいの作品だったっけと思ったら2019年の作品で、Netflixに浮かぶ新作はかつ消えかつ結びて。スコセッシ監督の作品は「シャッターアイランド」と「ウルフ・オブ・ウォールス…

六月-九月合併号

働いているといろいろと億劫になる、というのは言い訳かもしれず、働く以外に何もしないでいると何をするにも億劫になる、というのがおそらく正しい。そういう状況が後ろめたくまた情けなく、なので最近は強制的に朝、英語のレッスンと自分の勉強を行うよう…

5月

きっと6月を過ぎる頃には「もう2021年も半分が終わったなあ」などと思うのだろうな。積み上げ式に人生を考えているとあっという間におっちんでしまいそう。月ごとに目標を立てて成果を書こう、などと5月の頭は思っていたのだがまた無計画に本を読んだりして…

4月

四月のきらめきに、年を重ねるごとに負けそうになる。しかし十分に成人であるくせに春が憂鬱だと白状することは自分の人生の情けなさを認めるかのようであってやるせない。 服藤恵三『警視庁科学捜査官』(2021年) ツイッターで話題になっていたので手に取…

3月

ミン・ジン・リー『パチンコ』上・下(2020年) パチンコ 上 (文春e-book) 作者:ミン・ジン・リー 発売日: 2020/07/30 メディア: Kindle版 ツイッターでのレビューもアマゾンのレビューも良かったわりに私としては全然好きじゃなくて読書時間の9割で苦痛を感…

2月(幼少期の第六感と現在の日曜日の夜)

いままでいろいろとこのブログでも労働についての文句を垂れてきたがそれでも労働は手を変え品を変え不愉快を私に与え続けてくるのだから凄まじい。そのあたりの話はまた別の機会に行うとして、そうして労働で血ののぼった頭を冷やすための読書、観劇の記録…

一月

1月 仕事もなく暇だったのでこまめに本を読もうとした。働いているときに比べればよく読むことができたが想定より進まず。といっても私という人間のキャパシティはこれくらいなのかも、と思って許してはいる。以下、本、映画、観劇、美術展について観た順。 …

私なりに気を利かせたミッドサマー感想

誤解を恐れずに『ミッドサマー』のプロモーションを友人にするとしたら「男関係で少しでも不愉快な思いをしたことのある人は観に行ったらいいんじゃない?」ということだけ。破局を体感する物語としてよく出来ているのだ。あきらかに終わりの近いカップルと…

韓国映画『パラサイト』がおもしろかった話

新年一発目、年末から見たくてそわそわしていた『パラサイト』を特別上映で見に行ってきた。こういうとき、東京ってのはいいやねえ。と実家でゆるんだ頭の時差をかけ直す。 ネタバレ、しないでくださいね!とキャスト総出で念を押し押し。私も『鬼滅の刃』や…

5月6月のネトフリ(+映画)

五月病とは無縁の日々を送る社会人生活、労働は絶えず、しかし特に自分が変わっているような感じもしない昨今、なぐさみはNetflixくらいしかなく、マイリストはどんどこ登録されてちゃんと見られた試しもない…。 ロブスター カップルにならないと動物にさせ…

82年生まれ、キム・ジヨン

「キム・ジヨン氏、三十三歳。三年前に結婚し、昨年、女の子を出産した。」(p6)という冒頭の一文で、悲しいくらい勝手にこのキム・ジヨン氏の有様を思い描いてしまうのは私が悪いのであり、歴史も悪いのであり、社会も悪いんだろうな。 82年生まれ、キム・…

幽霊の話の話

David Lowery監督のA Ghost Storyを観てきたんですよ。 か〜〜〜語る言葉をもたない映画というのを久々に観て、いったいこれはなんの話なんだろうな、まあ、タイトルの通り幽霊の話であってたぶんパンフレットを読むと幽霊にまつわる、人間が想いを寄せがち…

女の決意の左向き顔

この前誕生日で、私もいやおうなくアラサーになりました。四捨五入で〜とかそんな小細工しなくてもアラサーになる年齢にめでたくなりました。しかし誕生日前日付近からな〜〜〜んとなく体調ならぬ心情が悪く、わかりやすく言えばずっと生理前!みたいなあの…

ピエールボナールのもったりと色彩豊かな世界に浸ってもろもろの創造力を回復する

国立新美術館の喫茶店は北欧ぽいの椅子(誰の作品だっけ?)が置いてあってかわいいね。黒革のチェアシートもモダンに調和的でいい感じ。つまらん人生なんて送っている暇はないのだよなあと痛感する。ピエールボナールは1867年生まれ、だいたいは「ナビ派」と…

全然よくわからないけど、それでも子育てのこととか

夏の終わりにちーとばかし旅行をして飛行機に乗る機会があったので飛行機と言えば観たいと思っていたけどほんとにシアターに行くまでにはちょっと腰が思いなって感じの微妙なクオリティの映画を観たりする時間なので、というわけで今回の旅行のフライトでは”…

平凡な家族の話をする平凡なブログエントリー

な〜んつうかさ仕事は忙しいっていうか生きる気力を失わせるんだよなあ、働き始めてからというものの土日はひたすらぼーっとしてる。というのも別にたぶん本当ではなくて、土日にひたすら人と会う予定を入れてしまってけっきょく自分のことは何もできずにい…

グレイテストショーマンは全然グレイトではない。

ああーーまたつまんない映画を観ちゃった。と思ったら脚本ビルコンドン。ビルコンドンといえば美女と野獣(2017)、ドリームガールズ(2006)、私はどちらも苦手な映画だったのでどんだけ相性悪いのよっていう。でもさあ、この映画でどれほどの人間が、「人…

勝手にふるえさせてほしい、勝手にふるえてろ

主演の松岡茉優さんとやらの演技がよいと聞いていて、わたくしわりと実は綿矢りさが好きなので観に行った! つっても綿矢りさの熱心な読者というわけではなく、読んだことがあるのは『インストール』『蹴りたい背中』『亜美ちゃんは美人』『かわいそうだね?…

ゲットアウトとシティベーカリーのチーズケーキ

私はいま修士課程の学生で修論を書いている真っ最中、締め切りまであと一か月ということになったのでずーっと頭は修論のことを考えっぱなし(マジで)。でも頭はいつまで経ってもクリアにならず、クリアじゃない頭で物事を考えることは本当によくないので、…

プラネタリウムとカカオマーケットbyマリベルのチョコレートスコーン、フルーツディップ

CACAO MARKET by MarieBelle 東急プラザに入っているマリベルのお店 チョコレートのお店でボンボンショコラ、カフェ併設。持ち帰り用の焼き菓子やらドライフルーツにチョコレートをかけたものやら、その他もろもろのチョコレート製品。有楽町ヒューマントラ…

たかが世界の終わり

ある男が十二年も戻ってなかった実家に帰ってそこで過ごす話。なんで十二年も戻ってなかったかというのは冒頭に明かされるしトレーラーでも流されるからそこまで重要なネタバレでもないのかもしれないけど、もしかして全く前情報なしで観たほうがおもしろい…

映画『キャロル』

“How many times have you been in love?” いい加減、芸術作品に都合のいい自己投影をするのをやめたい。 愛とは何か?私は、というより誰でも、各個人の愛の理想というものを作り上げている。出会い方、恋し方、過程に何がなければいけないか、何を共有しな…